ルーン文字と古英語

こんにちは。田村恵理子です。

古英語は、初期には主にルーン文字で書かれていました。先日、話の流れから英語の文字の話になったのですが、古英語がルーン文字で書かれたことは意外と知られていないのだなと思い、まとめておくことにしました。まだ書きたいこともありますので、加筆予定ですが公開します。

英語のアルファベットとラテン文字

私たちが今ふつうに使っている英語のアルファベットは、ラテン文字、ラテンアルファベットです。

大文字
ABCDEFGHIJKLMN​OPQRSTUVWXYZ

小文字
abcdefghijklmn​opqrstuvwxyz

ローマ帝国で ラテン語を表記する際に使われていた文字です。

ルーン文字とは

ルーン文字は、主に古代のゲルマン民族の言語で使用された文字です。古代のゲルマン民族の言語には古ノルド語、古英語、古高ドイツ語などが含まれます。地域で言うと、北欧諸国やドイツ、イギリスなどで使用されました。

おそらく2世紀から8世紀頃にかけて使用されていましたが、具体的な起源については議論があります。

ルーン文字はこれらの言語の音声を表すために使われました。また、一部のルーン文字は、文字自体に特定の意味や象徴を持つものとしても使われたようです。古代のゲルマン神話や信仰体系に関連して、宗教的な儀式や祭りで使用されることがありました。

 

古英語とルーン文字

古英語は5世紀から中世初期(11世紀)までの間に使用された英語の形態です。この時代の初期においては、古英語の表記にはルーン文字が広く用いられていました。後に、ラテン文字も使われるようになりました。

ルーン文字を用いた古英語の表記は、主に北欧諸国やアングロ・サクソン人の地域で見られました。ルーン文字は古英語の音声を表現するために使用され、碑文や木材などに刻まれる形で使われました。

ルーン文字による古英語の表記は、主に古い祭壇や石碑、剣や装飾品などの遺物から知られています。これらのルーン碑文や遺物は、古英語の研究において重要な情報源となっています。

特に5世紀から7世紀にかけて、古英語の初期の段階では、ルーン文字で古英語が表記された碑文が見つかっています。ルーン文字の碑文は、北欧諸国やアングロ・サクソン地域(イギリスのイングランド地方)で見つかっています。

古英語とラテン文字

古英語のルーン文字の使用は中世期に減少し、後にラテン文字が普及していきました。

8世紀以降、キリスト教の布教や修道院の設立により、ラテン文字の影響が強まりました。キリスト教の宗教的な文書や教育のために、ラテン文字が使われるようになりました。この時期には、古英語の文書や写本の多くがラテン文字で書かれるようになりました。

ルーン文字は徐々に使われなくなり、ラテン文字が主流となりました。

ルーン文字には魔術的な要素がある?

ルーン文字は予言や占い、魔術的な実践にも使用されました。古代のゲルマン民族はルーン文字を使って未来の出来事を予測し、運勢を占ったり、魔術的な呪文や護符を作ったりしました。これは、例えば漢字の元である甲骨文字が占いに使われたのと同じで、古代においては宗教的な儀式は生活と密接に結びついたため、古代の文字としてはよくあることでしょう。

しかし、ルーン文字は宗教的な儀式や祭り以外でも実用的な目的で、日常的なコミュニケーションや記録のためにも使用されました。名前や印章、道標、墓石など、個人や集団の身分や所有物を示すためにルーン文字が刻まれたり刻印されたりしました。さらに、商業活動や法的な文書、祝祭や儀式の記録など、実用的な目的のためにルーン文字が使用されることもありました。

古代のゲルマン民族の文化や社会で、ルーン文字は広範な用途に使用されました。単なる宗教的な儀式や祭りに限定されるものではありませんでした。

今は使われない、幻の文字だからこそ魅力がある?

後世に、ルーン文字が使われなくなってから、ルーン文字は神秘的な魅力がある文字として占い等で用いられるようになったようです。現代では、むしろ神秘的な文字として知っている人の方が多いかもしれません。

J・R・R・トールキンの指輪物語の中でもルーン文字が使われています。ハリーポッターにも登場します。

今は使われない幻の文字というのは、神秘的な感じがするのでしょう。梵字が墓石や位牌に用いられたり、お守りやファッションとして取り入れられているのと同じことかもしれません。梵字とは、古代インド語で使われた文字で、梵語(サンスクリット語)を書き表す際に用いられました。現代では

古英語を使っていた人々

古英語はイギリスのアングロ・サクソン地方で主に使われていました。

アングロ・サクソン地域とは、中世初期(5世紀から11世紀にかけて)のイギリスにおいて、アングロ・サクソン人が支配した地域を指します。

アングロ・サクソン人は、現在のデンマーク、ドイツ、オランダなどの地域から移住してきたゲルマン系の民族でした。彼らは5世紀にブリテン島に上陸し、ブリトン人やケルト人を征服してアングロ・サクソン王国を建国しました。

アングロ・サクソン地域は、主にイングランドの領土と重なります。具体的には、イングランド南部および東部の地域がアングロ・サクソンの支配地域でした。これにはケント、エセックス、サセックス、ウェセックス、マーシア、ノーサンブリアなどの王国が含まれます。

アングロ・サクソン地域は、アングロ・サクソン人の文化や言語、政治体制の発展が起こった場所です。この時代の後半には、ヴァイキングの襲来やノルマン征服の影響で地域の支配は変化しましたが、アングロ・サクソンの影響はイングランドの文化や社会に深く根付いています。

なお、アングロ・サクソン地域は現在のイングランドに相当する範囲であり、スコットランドやウェールズ、アイルランドなどの地域は含まれません。

ケルト人、ブリトン人はラテン文字を使用

現在のイギリスに相当する地域に元からいた人々、ブリトン人やケルト人も文字を使用していました。彼らはラテン文字を採用し、それを自身の言語に適応させた形式を使用していました。

ブリトン人は、古代のブリテン島(現在のイギリス)に住んでいた先住民の集団であり、ケルト系の民族でした。彼らはローマ帝国の支配下で、ラテン文字を学びました。このため、ブリトン人はラテン文字を使用して、ブリトン語の表記や文書の作成に利用しました。

ケルト人も同様に、彼ら独自の言語や文化をラテン文字で表記するようになりました。ケルト人の言語にはいくつかの派生があり、例えばアイルランドのゲール語やウェールズ語などがあります。これらの言語は、ラテン文字のアルファベットを使用して表記されました。

ローマ帝国の支配とラテン文字アルファベット

ブリトン人とケルト人は、古代のブリテン島(現在のイギリス)に住んでいた先住民の集団であり、ローマ帝国の支配下に置かれました。ローマ帝国は紀元43年にブリテン島を征服し、ローマ属州ブリタニアとして統治しました。この時期、ローマの支配者や軍団はブリテン島においてラテン文字やローマ文化を導入しました。

一方、ゲルマン人はブリテン島よりも大陸の地域に住んでいました。彼らの領土はローマ帝国の支配下にはありませんでしたが、ローマとの接触や交流はありました。ローマ帝国とゲルマン人の間には、戦争や同盟、貿易などさまざまな関係が存在しました。

ローマ帝国はゲルマン人との関係をさまざまな形で管理し、一部のゲルマン人部族を同盟国として認めたり、一部の領土を保護したりすることもありました。しかし、ローマ帝国がゲルマン人の領土を直接支配したわけではありません。

ルーン文字が使い続けられた理由も、そこにあるのかもしれません。

ルーン文字に直線が多い理由

ルーン文字は通常、石や木の表面に刻まれて用いられました。
そのため、刃物や鋭利な道具を用いて刻みやすいような文字の形状になった可能性があります。

ルーン文字の方が、ラテン文字よりも優秀!? th の音が現代英語で2文字で表される理由

英語の子音は、通常は一文字で一つの音を表します。例外は ch sh th です。

ルーン文字には、英語の th の音を表す文字がありました。つまり、一つの文字で th の音を表すことができました。しかも、有声音、無声音に異なる文字がありました。つまり、th の音を表記することに関しては、ルーン文字の方が、ラテン文字よりもずっと優秀だったわけです。

古英語には、th の音があり、ルーン文字には “th” の音を表すために、「þ(thorn)」および「ð(eth)」という2つの文字がありました。þは声門摩擦音の無声音を表し、ðは有声音を表しました。これらのルーン文字は、古英語の文書や碑文で頻繁に使用されていました。

古英語のみならず、他のゲルマン語派の言語でも同様の “th” の音を表すルーン文字が使用されました。たとえば、古ノルド語(古代スカンディナヴィア語)においても「þ」と「ð」のルーン文字が使用されました。

ラテン語には、古英語や古ノルド語のような “th” の音はなく、また、ラテン語には、”th” の音を直接表す特定の文字や音素は存在しませんでした。(一部の方言や後の言語変化によって関連する音が発生したことはあります。)

このため、古英語をラテンアルファベットで表すにあたって、苦肉の策として th の2文字が使われたのかもしれません。

 

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